由来とみどころ

◆重要文化財

 函谷鉾を飾る工芸品・染織品は、いずれも優れたものばかりであるが、なかでも昭和四十五年(一九七〇)五月二十五日付けで国から重要文化財の指定を受けた、函谷鉾の至宝は前懸け「イサクに水を供するリベカ」のタペストリー(毛綴織)である。
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原品は、十六世紀末ベルギー製、旧約聖書創世紀第二十四章の説話より取材したアブラハムの子「イサクの嫁選びの図」図柄は娘リベカからアブラハム家の老僕エリアザルが所望の水を受けるところ、右上には騎馬に乗ったイサクの姿が見える、そして下半分には物語の続き、リベカに婚約の腕輪を贈っているところ、この様に物語の連続した場面が一枚に織り出されている点は他の重文指定のゴブラン織りでは見られない異色の作品である。

 裏面には「亨保三年(一七一八)戉戌六月吉日再興」と書かれているので宝永五年(一七〇八)の大火災後に入手し、天明八年(一七八八)の大火には無事であった事を示している。当時町内在住の沼津宇衛門が寄贈、それまでの渡来は定かではないが、おそらく寛永十年(一六三三)オランダから長崎平戸の松浦藩を通じ徳川家光に贈られたものではないかと思われる。

 大正十四年(一九二五)六月吉日再修繕」と墨書があり、一方近年退色が進んできたので復元新調の計画がなされ、幸いにも縁の縫込み部分に原色を想定させるものがあり、各種の資料を検討し原作を彷彿させる鮮やかな復元新調が凡そ三年の期間を費やし平成十八年(二〇〇六)に完成したのである。

 お祭期間中は重要文化財の指定を受けた前懸けは二階に飾り、お祭以外は蔵で大事に保管されている。ちなみに復元新調された前掛けは巡行時に鉾に掲げ披露される。